会陰ヘルニア整復
- その他
未去勢のオス犬にしばしば発生する病気です。
私は雌犬でこの症例を診たことがありません。
去勢手術をすることでこの病気の発生率や、再発のリスクを下げることができる男性ホルモンの影響が大きい疾病です。
患畜は13歳のシーズーで、御多分に洩れず未去勢のオスです。
数ヶ月前から排便し辛くなり、肛門右側が膨らんでいるとのことでした。
飼い主様は腫瘍ができたと思い、そのまま何もせずに余生を送らせようと考えられていたそうです。
耳の痒みで受診の際に会陰ヘルニアを診断し、整復手術を実施することになりました。
肛門から指を入れてみると、直腸が右側に迂回しているのがわかります。
会陰部を構成している筋肉間の結合が緩み間隙が生じ、そこから腹腔内臓器や脂肪組織が出てきます。
本症例は直腸が飛び出し、腸管が迂回することで糞便が移動し辛くなり、直腸内に溜まっていたのです。
幸いなことに左側にはヘルニアは生じていなかったので、右側のみの手術となりました。
ヘルニア孔を構成する複数の筋肉を縫い合わせて整復します。
今回はそれぞれの筋肉の退化が酷くなかったので、骨盤に付着している内閉鎖筋を剥離し、フラップを形成してヘルニア孔を整復しました。
術後の経過は良好でしたが、残念ながら反対側も右側同様に会陰部が膨れてきました。
右側の筋肉が整復されたために、ヘルニア孔ができる寸前だった左側の会陰部に負荷が生じてヘルニア孔ができたのでしょう。
時々観られる現象です。
右側の抜糸時に左側の会陰ヘルニアも同じ手法で整復しました。
術後は便通が改善され、排便時に苦しむことは無くなったとの事でした。