チワワの難産介助
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早朝の電話。
電話に出てみると弊院の飼い主様からでした。知り合いが飼育しているチワワが難産になっているとのことでしたので、直ぐに来院いただくことにしました。
想定される検査や処置の準備をして待ちましたが、なかなかいらっしゃいません。
瀬戸内市の方からの電話だったので、来院される方も遠くの方かもしれません。
どのような状態か不明ですが、時間の経過は胎児にとって命取りです。
ようやく来院され、連れてこられたチワワを診ると、胎児は尾位側体向(横に倒れて後ろ足から分娩されている状態)で生まれてきており、頭部が側頭位(横向き)となり骨盤を通過できなくなっているようでした。
尿膜と羊膜は破れ、胎児の位置から考えると胎盤は剥離していると思われました。
この状態になって既に5時間以上経過しているとのことで、胎児の心拍は確認できず、体も冷たくなっていました。
それでも早く子供を出してやらなければ、母親が弱ってくる可能性があります。
子供を引っ張り出そうと試みましたが歯が立たず、鎮静をかけて開腹し子宮越しに胎児の頭部を押して、なんとか胎児を傷つけずに出すことができました。
チワワにしてはかなり体格の良いメスの赤ちゃんでした。
胎児はこの1頭だけでしたので、大きく成長したものと思われました。
飼い主様の話によると、今日はかかりつけ医は休診日で、何件かの動物病院に電話をしたものの、早朝の時間帯はどこの病院も電話がつながらなかったとのことでした。
かかりつけ医で2週間前にレントゲン検査を行い、「今の胎児の大きさならば普通に生まれる。」と言われたそうですが、分娩間近の2週間で状況は大きく変わってきます。
また短頭種(ブルドッグやフレンチブルドッグ、パグ、シーズー、チワワ等)は通常分娩で無事に生まれてくることが少ない犬種です。
特にブルドッグやフレンチブルドッグなどは、産後成長可能な大きさの胎児は骨盤を通過できないため、帝王切開が必須だと考えます。
今回の場合、胎児と母犬の骨盤腔の大きさの比較では問題ありませんでしたが、生まれてくる時の胎児の体位や陣痛の強さ等によって難産になることもあります。
結果論ですが、犬も飼い主様も初めてのことで不安であれば尚更、もう少しかかりつけ医と飼い主様は連絡を密に取り合い、緊急時の対応などについても話し合われていれば、今回のようなことは起こらなかったかもしれません。
非常に残念な結果でしたが、母犬はまだ若く、卵巣や子宮もそのまま残っているので、健康であれば今後の出産が期待できます。
次回は無事なお産ができればと思います。